第２５回 井の頭公園と死体

今年４月。井の頭公園で６０代から、７０代くらいの女性の死体が池から上がったという事件が起きた。

普段のどかな井の頭には、「三鷹・武蔵野民の憩いの場」という面だけではなく、「自殺の名所」や「殺人事件」といった面も併せ持っている。今回はそんな、井の頭公園の負の一面に迫っていきたい。

もくじ

1. 井の頭公園とは？
2. 自殺の名所井の頭公園
3. 井の頭公園バラバラ殺人事件

 

１,井の頭公園とは？

井の頭公園は東京都三鷹市と武蔵野市の境にある公園で、大正６年に郊外の公園として作られました。戦後から進んだニュータウン開発により減っていった緑地や水辺の生態系といった、近代以前の武蔵野の貴重な自然を残した場所として、中央線沿いに住む人たちの憩いの場となっています。

公園の真ん中にある井の頭池は、暗渠（あんきょ。埋め立てられた堀や川）となった神田川の源流となっていて、明治の初めまでは真水が取れなかった江戸の貴重な水源となっていましたが、現代の水道が普及してからはその役目を終えました。

 

DSC_0018

井の頭公園のボートにカップルで乗ってはいけないというジンクスがありますが、それは、公園内に嫉妬深いことで知られる川の女神、弁財天が祀られていて、その怒りに触れるからだともいわれています。

２,自殺の名所井の頭公園

井の頭公園は、「郊外初の公園」、「中央線沿い住民の憩いの場」だけでなく、「自殺の名所」という面も持っています。

「自殺の名所」としての井の頭公園の歴史は古く、大正時代末の朝日新聞の記事に、「松本訓導碑の前で、手癖の悪かった唐物屋の姪が自殺していた」といった内容のものがあるほどです。

近隣住民でそのような話を見たり聞いていたのでしょう。学者の今和次郎は、自殺者の年齢や服装（あるいは装備品）を詳細にメモし、どこで自殺したかを地図にまとめたものを『考現学入門』という本の中で紹介しています。

３,井の頭公園バラバラ殺人事件

井の頭公園は「自殺の名所」だけでなく、バラバラ殺人の舞台になったことでも知られています。

バラバラ殺人事件の発端は、１９９４年４月２３日朝に公園の清掃員がゴミ箱の整理をしていたときに白い半透明のごみ袋を見つけ、中を開いたらバラバラになった男性の遺体が入っていたのを見つけました。驚いた清掃員は、近くの売店の経営者であったＳさんに報告。その後に警察に通報したというもの。

警察の捜査で、他の５、６個の白い半透明の袋から男性の体の一部が発見され、ＤＮＡ調査の結果、男性の遺体は近隣に住む建築士のものだと判明。

捜査は難航し、２００９年に時効となりました。

時効から１０年経った今でも、「犯人は誰なのか？」ということが度々議論されていて、Daily News Onlineというサイトでは、「某国の工作員」。血抜きがされていたという事実から、「医者」ではないか？　と一部のツイッターユーザーは考察しています。

Daily News Onlineの「某国の工作員」説は、統計上の犯罪の多さや歴史に裏付けられた残虐な国民性から、遺体をバラバラにしようと考えてもおかしくないでしょう。ましてや工作員なので、それなりの証拠隠滅の技術を持っていて、自らに都合の悪い情報を知ってしまった人間を抹殺しようとするのは当然と考えてもいいでしょう。

医者説に関しては、医者を志している（あるいは医者になった）者が誰しも、「たくさんの人を救いたい」という高尚な志でなっているわけではないので、精神病質（サイコパシー）の人が善良な市民の皮を被り、「人を殺したい」という欲求を叶えるために血抜きなどの設備を手にし、技術を身に付けていたとしても何らおかしくはないでしょう。

遺族のためにいち早く犯人が見つかってほしい、と願うばかりです。

【参考文献】

井の頭恩賜公園（http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/jimusho/seibuk/inokashira/index.html）
朝日新聞『松本訓導碑前に萎れた少女』（1923年6月20日）
朝日新聞『謎の轢死少女は手癖が悪いと叱られた唐物屋の姪』（1923年6月23日）
今和次郎『考現学入門』（ちくま文庫）
毎日新聞『ビニール袋から足　井の頭公園バラバラ殺人か』（1994年4月23日　夕刊）
毎日新聞『劇場型犯罪？、指紋削りながら発見、容易な場所に』（1994年5月3日　朝刊）
Daily News Online『時効から6年「井の頭公園バラバラ殺人」の驚くべき真相【前編】』（http://dailynewsonline.jp/article/927543/）